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(オーストラリア)小田侑太朗の奇跡(サッカー)

2016.6.16

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フィールドプレーヤ―のレベルに比べて、遥かにレベルが高いと言われているオーストラリアリーグのゴールキーパ達。そういった事情を十分に熟知しながらもオーストラリアでのチャレンジを決心し、チャレンジをしつづけた男が、遂に彼が目標としていたピッチに立つ事ができました。

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小田侑太朗22歳。現役の慶応大学生である彼は大学のサッカー部には所属せず、東京都社会人リーグに所属するHBO東京でプレーをしながら、オーストラリアでのチャレンジを準備してきました。そんな小田ですが、オーストラリア渡航直前の昨年11月に試合で腰椎を骨折し、怪我が完治しない状態で、今年の1月にオーストラリアへ渡航してきました。

渡航後は複数のクラブの練習に参加するものの、170センチそこそこの日本人ゴールキーパーがオーストラリア人ゴールキーパーと勝負するには見た目の体格差が余りにも大きく、そして小田自身も怪我の影響から本調子ではないという事もあって、契約までの道のりは厳しいと思われましたが、そんな矢先に練習中に指を脱臼し、2月という大事な時期にまたもや怪我で練習さえも出来ない状況に陥ってしまいました。

そこからリハビリ生活が始まり、徐々に回復しつつあった3月の中旬頃から、プライベートキーパーコーチの指導を受けながらNPL3のクラブに練習参加する日々が続きます。既にシーズンが始まっているという事もあり、クラブ側からよい評価を受けたとしても契約までには至らず、移籍期間が始まる6月になんとかキーパーを探すチームが現れる事を祈りながらアマチュアリーグでプレーしていた6月8日、Illawara Premier Leagueに所属するShell Cove Barbarian FCの監督から、僕の元に一本の電話が掛かってきました。

「(プライベート)キーパーコーチのドラゴンから、日本人キーパーが一人彼の元でトレーニングを受けていると聞いた。彼と今すぐに契約したいのだが、直ぐに手続きを手伝ってくれないか?」

「確かにドラゴンの元で日本人キーパーはトレーニングしているけど、彼のプレーを観なくていいの?」

「彼のポジションはキーパーなんだろ?そうであれば問題ない。ドラゴンも彼はこのレベルでプレー出来るといっている。今、トップチームはおろそか、ユースにもキーパーがいないんだ。給料ももちろんだすよ。しかしながら今週の試合に出場するには、明日の昼までに選手登録手続きを終えないといけない為、今すぐに手続きを行って欲しいんだ。」

こんな流れでいとも簡単に、小田侑太朗のShell Cove Barbarian FCとの契約が決まったのです。

そして契約から三日後、小田はIllawara Premier Leagueのピッチでのデビュー戦を迎えました。

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試合開始から固さが見られた小田ですが、この舞台でプレーしているという喜びさえも伝わってきます。

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高さで不利な分、セットプレーでは危ない場面も。

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小田と同じ、Shell Cove Barbarian FCでプレーする小幡和弘も、不慣れな右サイドのミッドフィルダーのポジションながら、安定したプレーを見せます。

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そしてShell Cove Barbarian FCの中心選手である荒川晶平。元オーストラリア代表で、3年前にはNPL1のMarconi Stallionsで佐々木周の監督でもあった現Shell Cove監督のPaul Carter氏曰く、「十分にNPL1でプレーできる実力を持っている」との評価を受けている荒川は、この日も大雨の影響でボコボコのピッチ状態にも関わらず、圧倒的な技術を元に多くのチャンスを演出します。

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この指示を出している表情!

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チームの核である荒川がボールを持つと、相手も体ごとぶつけてボールを取りに行きます。

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相手の鋭いスライディングも、いとも簡単にかわしてしまう荒川。

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前半に失点を喫してからは見事な集中力を見せた小田。前半のうちにShell Coveが同点に追いつき、1-1のまま後半に突入します。

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この集中している表情!

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オーストラリアのどの試合でもよく見られる、乱闘直前のシーン。もちろん日本人選手が関与する事は殆どありません。

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後半に入り一進一退の攻防の中、残り5分でShell Coveが痛恨の失点を喫してしまい、呆然とゴール前で座ってしまった小田侑太朗。ペナルティーエリア内での混戦から、ゴール隅に決められたシュートだっただけに、小田にはどうする事もできませんでした。

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次の日に行われるカップ戦の為の温存策なのか、後半途中から、相手チームであるSouth Coast UnitedでFWとして出場した李東俊。

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出場時間が短く、この試合では特に見せ場がなかった李東俊ですが、去年NPL2でプレーしていただけに、このリーグでも十分活躍できる実力を持っている選手です。

結果的には1-2で敗れてしまい、自身のデビュー戦を飾れなかった小田侑太朗ですが、本人はこの試合で何を感じたのでしょうか?

小田のデビュー戦の感想です。

「練習参加もせず、チームメートもついさっき知り合ったばかりという状況と、リーグ自体のレベルもわからないままでの試合だったので、不安感はありました。実際に試合を戦ってみて、球際でかなり激しくくる、そしてそれをジャッジするレフリーの基準も違うという事を感じました。課題としては、やはりこの身長だと相手がどんどん放り込んでくるので、その対応策を考えていかなくてはいけないという事です。1失点目はパンチで逃げるべきでした。それと、裏への飛び出しがアマチュアリーグでプレーしていた時のFWよりも全然速かったので、前へ出れる、出れないの判断を良くしていく事がこのリーグでプレーしていく為には必要だと感じました。」

今後の小田の活躍に注目していきたいと思います。

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