前田眸(まえたひとみ)、22歳。
来年の頭に大学卒業を控え、3週間の日程でオーストラリアに渡航してきたのは11月20日。
14歳以下の日本選抜にも選ばれ、女子サッカーの強豪、日ノ本学園高校で高校選手権にも出場した経歴を持つ前田。
しかし度重なる怪我で、この一年間はまともにボールを蹴ってこなかったという。
そんな彼女が今回オーストラリアに来た理由とは、
【サッカー選手として海外でどれだけ評価されるのか、チャレンジしてみたいと思った】
当初はドイツへのサッカー留学を予定していたが、出発直前になって目的地をシドニーへ変えた前田。
既に警察官の内定を貰っているが、海外でお金を貰ってプレーできるならば内定を断る事も考えての決断である。
【将来的な事も考えて、宮下さんにお世話になりたいと思います。急ですが宜しくお願いします】
というLINEテキストが僕の元に送られてきてから3週間後、彼女はシドニー空港へ降り立った。
シドニー到着後、NPL1とNPL2に所属するクラブの練習に参加した前田。
長いブランクがあるとはいえ、州トップレベルの選手達の中でもその技術は抜きんでていた。
NPL2のクラブからは初回の練習参加でオファーを貰うものの、よりレベルの高いNPL1でプレーしたい気持ちもある。
そんな気持ちも、両クラブの練習に行き続ける中で徐々に変化しはじめた。
【高いレベルでプレーする事よりも、サッカーを楽しみながらプレーしたい】
中高大と進学するにつれて、サッカーを楽しみながらプレーする時間が減った気がする。
誰かに強制させられたのではなく、自分が好きで始めたサッカー。
そのサッカーを始めた頃の気持ちに戻って、またプレーしたい。
日本へ帰国する前日、正式に警察官の内定を辞退し、NPL2に所属するNepean FCと契約をした前田。
NPL1のクラブとの契約可能性もあったったものの、よりサッカーを楽しめると感じたこのクラブと契約したのである。
安定した公務員の職を捨ててまで、オーストラリアでのチャレンジを選択したこの決断が決して間違ってはいなかったと、きっと彼女自身が証明してくれると僕は信じている。
豪州フットボーラーズ