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(オーストラリア)Westfield FFA Cup Round of 32 Wollongong Wolves VS Sydney FC(サッカー)

2016.8.15

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Wollongong Wolvesがロナウジーニョに10万豪ドル(約800万円)でオファーを出した事で、オーストラリア国内はもちろん、日本でも話題となったこの試合。結局ロナウジーニョ側が、Wollongong Wolvesが提示した額の2倍に当たる、20万豪ドルでないとプレーしないという事でこの試合での彼のプレーは実現しませんでしたが、そういった中でもこのRound of 32での歴代最入場者数となる8029人(メインゲートの入場者数しかカウントされておらず、実際は1万人以上入場していたとの事)もの大観衆を集めての大一番で、Wollongong Wolvesの川瀬浩太は、センターバックでのスタメン出場となりました。

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試合開始20分前の様子ですが、この時点で既に、収容人数2万3千人のスタジアムが半分以上埋まっています。

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試合前からゴール裏に陣取ってチャントを歌う、シドニーFCのサポーター達。

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Wollongong Wolvesの背番号2番、川瀬浩太。一万人を超す大観衆、そしてケーブルテレビ、インターネットでオーストラリア全土に生中継されている中、オーストラリアのトップチームであるSydney FCとの真剣勝負という、彼の今までのサッカー人生で決して経験した事がないであろうこの大舞台で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか?

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試合開始のホイッスルが鳴った直後、もう一人の外国人であるチリ人のNicholas Bernalが、中央からのドリブル突破からフリーキックを得ます。

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このNicholas Bernalですが、シーズン開幕前の今年の2月、日本人選手2人を連れてWollongong Wolvesの練習に参加させていた時に初めてみた時は、全くと言っていいほど体が絞り切れておらず、監督からも日本人選手2人を含めた3人の中では一番低いといった評価でした。しかしながら開幕直前までクラブの練習に来続けた結果、見事に契約を獲得、その後は見違えるほどにコンディションを上げ、チームの得点源としてシーズンを通じてコンスタントな活躍を見せてきた選手です。

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今まで経験した事のない大舞台でプレーしているという緊張からか、試合序盤は川瀬の浮足立つ様子が、反対側のスタンドまで伝わってきます。

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この試合のピッチに立ったSydney FCの多くの選手が元、若しくは現代表選手という肩書を持っていますが、川瀬自身はそんな事も全く知らずに彼らとマッチアップを繰り広げます。上の写真で川瀬の背に手をあてている選手は、2011年のアジアカップ決勝、李忠成の決勝ゴールのシーンで彼のマークを外してしまったDavid Carney。Sydney FCの初代メンバーでもある彼は、9年という長い月日を経て、今年Sydney FCに戻ってきました。

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この試合で、川瀬が最も多くマッチアップを繰り広げたMatt Simon。アグレッシブなプレースタイルを特徴とする選手で、この日もボールがないところで川瀬の足を踏んだりエルボーを食らわせたりと、ダーティーなプレーを頻繁に繰り広げていた彼ですが、逆に言えば、勝つためには手段を選ばない、あくまでも結果にこだわるという、徹底した勝利への執着心を彼は持っているとも言えます。

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2009年にはオーストラリア代表としてプレーしていた経歴を持つMatt Simonを相手に、前半は体を張った守備で、仕事らしい仕事をさせない川瀬。

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セルビア代表として、南アフリカで行われた2010年のワールドカップでは、ドイツ戦、オーストラリア戦とスタメンとしてプレーした、Sydney FCの10番を背負うMiloš Ninković。プレシーズンという事でまだ本調子ではないものの、この日の彼のテクニックは、Sydney FCの選手達の中でも群を抜いていました。

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守備的な布陣を敷くWollongong Wolvesに対し、ボールボゼッション率では上まるものの、決定的なチャンスを殆ど作れないSydney FC。

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この試合をオーストラリア全土に生中継したFoxtelでは、川瀬浩太は北海道の札幌出身で、昨シーズンはWollongong Unitedでプレーし、チームメイトには金城基樹、湯澤大佑といった日本人選手も一緒にプレーしていたという事まで、解説してくれていました。

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前半に訪れたPKのシーンでは、見事にWollongong Wolvesのキーパーがセーブ。このセーブに、殆どWolvesサポーターで埋め尽くされたスタンドの観衆の興奮が、ボルテージに達します。

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前半を無失点で凌ぎ、ロッカールームへ向かう川瀬の表情からは、かなりの疲労感が伝わってきます。

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ハームタイムに掲げられた、Wollongong Wolvesのフラッグ。

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後半に入ると、前半防戦一方だったWollongong Wolvesも、攻撃で徐々にチャンスを作り始めます。

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相手ゴール前でのセットプレーから、こぼれ球を狙った川瀬のこのプレーは、相手のクリアが一歩早くシュートに持っていけません。

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川瀬のこの打点の高いジャンプ!しかしながらボールはどこに?

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今年の5月に行われたACLでは、2015年のアジアチャンピオンである広州恒大も倒しているSydney FCを相手に、後半中盤までなんとか食らいついていたWollongong Wolves。しかし後半22分、遂に試合の均衡が崩れます。

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この時間まで仕事らしい仕事を殆どしていなかった中でのMatt Simonのこのヘディングが、無情にもWolvesゴールに突き刺さります。ボールを止める、蹴るといった基礎技術は、Sydney FCの選手の中では相当下の部類に入るものの、このような重要な場面での一発が、彼がこのレベルで長年プレーしている大きな理由であると言えます。

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失点直後、得点をしなくてはいけない状況となったWollongong Wolvesは、川瀬浩太をボランチのポジションに上げて攻撃の糸口を探します。

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しかしその直後、川瀬がいなくなり手薄となったディフェンスの穴をつき、Sydney FCが追加点を挙げます。

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中田英寿も所属していたイタリア、セリエAのFiorentinaから今シーズンSydney FCに移籍してきたJoshua Brillanteを相手に、ドリブルを仕掛ける川瀬浩太。

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何とか一矢を報いたいWollongong Wolvesは、前線に人数を掛けて総攻撃に出ますが、Sydney FCのゴールマウスは割れず、試合終了が一刻と近づいてきます。

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そしてロスタイムには、ベテランのDavid CarneyがSydney FCの3点目を挙げ、終了のホイッスル。Wollongong Wolvesの2016年のFFAカップはこの時点で幕を閉じました。

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電光掲示板に光る0-3というスコア。最終的には3点という差がついたものの、後半の中盤まではWolvesがよく持ちこたえていただけに、Wolvesとしてはあの時間帯を耐えていればという、悔しさが残る試合内容となりました。

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Miloš Ninkovićと健闘を称えあう川瀬。

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David Carneyは、Aリーグ開幕当時のSydney FCで見せていたキレキレのドリブルは既に影を潜めていたものの、まだ十分にSydney FCの中心選手としてプレーできるという事を、証明してくれました。

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平日の夜にもかかわらず、本当に多く集まったSydney FCのサポーター。

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試合後は、ロナウジーニョが来たのかと思わせる程の、ちびっ子達からのサイン攻勢にあっていた川瀬浩太。

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試合を終えて、多少とも悔しさが表情から滲み出ている川瀬浩太。代表選手を多く抱えるオーストラリア有数のビッククラブであるSydney FCとの真剣勝負の中で、彼自身、これらの選手達を相手にも、それなりにやれるという手ごたえを感じる事ができた事に間違いありません。写真右に映っている、現在オーストラリアでワーキングホリデー中の川瀬浩太の妹も応援に駆け付けてくれたこの一戦で、サッカー選手として大きな経験値を得た川瀬浩太の今後に期待しましょう。

(写真撮影:斉藤麻衣子)

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