FCバルセロナという世界最高峰のクラブで、ヨハンクライフとともに最強チームの土台をつくった伝説的指導者、アントニオ・デラクルス氏。そのアントニオ氏がヘッドコーチとして在籍し、直接彼の指導を受けることができるフットボールアカデミー、RAFA(http://rafa.asia/)から今年の3月、一人のチャレンジャーがシドニーへやってきました。
田川慎太郎、19歳。ボランチを主戦場とし、テクニックには自信を持っているという豪語する田川の、RAFA時代のプロフィール写真。なかなかふてぶてしそうな感じが伝わってきます。
田川のシドニー到着日、あのプロファイル写真からは想像もつかないような、長崎弁を話す純朴な少年が僕の前に現れました。そしてその日、日本からのフライトではほとんど寝れなかったのにも関わらず、サッカーがしたくてウズウズしている田川を、早速サッカーアカデミーへ連れていきました。上の動画がその時の様子です。
シドニー到着から一週間後、NSW State Leagueに所属するBankstown Unitedへの入団が決まり、アンダー20のカテゴリーで試合に出場してきた田川。6月にはNPL2に所属するSpirit FCからオファーがあったものの、Bankstown United側の、田川をどうしてもとどめさせたいという強い阻止もあり、上のカテゴリーへの移籍は実現しませんでした。
そんな中、アンダー20のチームで3試合連続得点という結果を残した田川に対し、トップチームの監督から、トップチームでスタメン起用をするという声が掛かりました。
そんな田川の、トップチームでの出場という雄姿を見ようと、カメラマン宮下は新しく購入したシグマの望遠レンズを手に、試合会場へ向かいまいした。
会場に到着するとアンダー20の試合が行われており、後半30分でスコアは0-4という状況。フォアードで先発出場した伊奈祐二が良い動きを見せるものの、得点には至らずこのままタイムアップ。
右サイドバック、そして後半終盤にはフォアードでプレーした宮元凌。この敗戦に、本人も肩を落とします。
アンダー20の試合に引き続き、トップチームの試合が始まりました。前日、スタメン出場を言い渡されていたはずの田川は、なんとベンチースタートです。
レギュラーシーズンを4試合残し、2位との僅差で首位を走るBankstown United。この試合で勝てば、NPL3への昇格の可能性がグンと上がるものの、落とした場合は自力優勝が消滅する可能性があるだけに、選手達も相当な気合が入っています。
Bankstown Unitedの右サイドバックで出場した中野陽樹。シーズン当初と比べて、髪型がだいぶ落ち着きました(笑)。
絶対に負けてはいけない試合で、前半10分、Bankstown Unitedは先制点を許してしまいます。
この緊迫した雰囲気の中で、むしろそれを楽しんでいるような表情を見せる中野。
うん。いい表情だ。
両者とも絶対に譲れない、意地と意地がぶつかりあう戦いの中で、あわや乱闘に。
そして熱くなったBankstown Unitedの監督が退場になるという、異例のハプニングまで。こんな状況で、田川の出場機会は訪れるのでしょうか?
後半は残すところ僅か15分。0-2で負けているBankstown Unitedは2つの交代枠を使っており、もしかしたら今日は田川の出番はないのでは?と思ったその瞬間、
フェンスの外から監督に呼ばれた田川。ついにこの瞬間が来ました!
アンダー20の試合にフルで出場し、体力的にはまったくフレッシュではない状態でピッチに送られた田川。果たしてこの短い時間で、何かを見せてくれるのでしょうか?
この瞬間を待ちわびていた田川だけに、気合は十分に入っています。
藤田カメラマンもこの瞬間を待っていたとばかりに、田川にレンズを向けて動画を撮影します。
黒人選手3人と田川。このショットはかっこいい!
後ろから激しいタックルを食らう田川。
強引にいけば、自分でシュートまで持っていけたこのシーンで、味方への横パスという、無難なプレーを選択した田川。リスクを恐れずにチャレンジする回数を増やしていく事が、彼が次のステップへと進む為のキーなのかもしれません。
結局このまま0-2で試合は終了。Bankstown Unitedにとっては、昇格に暗雲が立ちこめる、痛恨の敗戦となってしまいました。田川自身のパフォーマンスは、与えられた短い時間の中で目立ったミスはなかったものの、目立ったプレー、状況を変えるプレーもなく、本当の意味での彼の評価は、次の試合まで持ち越しとなりました。
豪州フットボーラーズ