豪州フットボーラーズ
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(オーストラリア)少年たちのチャレンジ(サッカー)

2016.11.10

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今回は、シドニーの日系の子供達で構成されたサッカーチームであるSollev FCの活動を、ヘッドコーチである寺本貴生のレポートでお送りします。

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今年もフットサルのシーズンがやってきました。毎週日曜日にWilloughby Leisure Centreで約半年間かけての フットサル大会にソルリエーフ選抜チームとして大会に参加しています。昨年のフットサル大会の優勝から一年が経ち現在5節まで終わり未だに負けなしで今年も優勝を狙える位置につけています。

 今年はU-12での登録を行い、ソルリエーフの選手達のほとんどが11歳、10歳の年齢での参加です。この年代では1つ2つの学年が違うだけで子供達の体格差は違います。そういった中でいかに勝ち続ける事が出来るか、ゴール前を固められるとなかなかゴールが奪えないと感じられる場面が多く見られます。日本人の得意な俊敏性を活かし、相手の裏を取る動きを連続して行えるかが勝負になってくるでしょう。昨年度の優勝は彼らにとって良い経験になった事は事実ですが彼らの挑戦はこれからです。また今年は日本代表のユニフォームではなくSollev FCのユニフォームを発注し気合十分です。

ここまで色々なサポートのお陰で素晴らしいスタートを切る事が出来ています。

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もう1つの挑戦としてソルリエーフのU-8の子供達の大会への参加です。初めて試合するという子供達が多く、最初は何をしてよいかわからない子供達ばかりでした。フリーキックでいきなりドリブルを始める子、喉が渇いたのとベンチに戻ってくる子、初めてサッカーの試合をする時は皆このような感じです。保護者の方々もビデオを撮り、子供の成長をコーチ陣と共に見守っています。

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サッカーを始めた頃は勝ち負けよりただボールを蹴るだけが楽しくてたまらなかった。しかし大人になるにつれてその大切な事を忘れがちになってしまいます。しかし彼らを見ると”初心”を思い出させてくれます。初めてのゴール、初めてのアシスト、初めてのガッツポーズ、初めての勝利、何もかもが初めてなのです。必死にボールを追いかける姿は周りに感動を与えます。本当にボールを蹴る事を楽しんでいます。

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練習中、子供は遠くの木に向かってボールを何度も蹴ります。しかし大人になるとその行為をしなくなります。なぜかというと単純にボールを取りに行くことが面倒くさくなるからです。しかし子供はボールを取りに行く事よりボールを蹴る事の方が楽しくて仕方ないのです。心から楽む事が大切です。

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Sollev FCのコーチ陣はサッカー選手としてオーストラリアにチャレンジしています。子供達が夢を持つようにコーチ陣も夢を諦めない姿勢を持っています。彼らに伝えながら自分自身を見つめ直すきっかけになります。

オーストラリアでしか味わえない戦い

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10月3日(月)にアフガニスタンとフィリピンのU-16の大会に参戦しました。ソルリエーフ選抜チームの平均年齢は11歳。相手は16歳でまるで大人と子供でした。明らかに体格の違うゲームでもあり試合前はゲームとして成り立つか心配でした。20分ハーフで行われたこの大会は全3チーム。体格差は明らかに違うものの彼らのボールタッチはオーストラリアの高校生にも負けていませんでした。そして何より大きな選手と戦う時に必要な気持ち、「負けない事」を最後まで忘れませんでした。

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この様な年齢差のある試合は日本の高校生相手では試す事ができません。日本の高校生では試合をすると必ず手を抜きます。それは日本人だと小学生と戦うと危ないと感じてしまうからです。しかしオーストラリアの子供達は手を抜く、相手に合わせると言ったことがあまり見られません。日本人の子供達の方がテクニックがある為、パスを回す場面もありましたが、やはり体格の差は補えず倒される場面が多々ありました。何度何度も倒され、泣きながらプレーする子供達を見て、途中何度もゲームを中止にしようと思いましたが、それでもやりたいとコーチのところに来る姿は去年の彼らでは考えられない程の大きな成長で、止める事が出来ませんでした。オーストラリア人も熱くなると自分をコントロールできなくなるのか、相手が子供でも本気のシュートを打ったりと、彼らの負けず嫌いは日本人の想像を超えるものがあります。しかしこの大会はソルリエーフの選手達にとって恐怖に打ち勝った大会になった事は間違いないでしょう。

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九州男児Takaoの挑戦!

 

今年もソルリエーフの監督としてフットサル大会に参加できる事に嬉しく思っています。僕の役割は彼らの可能性を少しでも引き出す事と共に彼らの存在をオーストラリアや日本のサッカー界、つまりJリーグ関係者、日本サッカー協会に発信する事です。すでに彼らのプレーはオーストラリアの同年代には負けてないと思います。現代の日本サッカーでは海外挑戦する事で成長すると言われています。違う環境でプレーする事によって世界のサッカーを肌で感じる事ができるからです。しかし挑戦するに当たって多くの壁にぶち当たります。

その壁が言葉の壁と体格差です。しかしソルリエーフの子供達にはその壁がありません。なぜなら元々その環境で育ち既にその舞台で戦っているからです。海外の大きな選手と小さい頃から当たり前のように戦っており、そして英語日本語共に話せます。それらは彼らにとって武器です。彼らには最初に当たる壁がないのです。

オーストラリアの子供達と日本の子供達とでは性格が全く違ういます。日本の子供達は1つの事を集中して継続する事が出来ますが、僕がオーストラリアで指導を続けながら感じた事はオーストラリアの子供達は集中が継続できない。僕は来た当初そう感じていました。しかし子供達と触れ合う時間が長くなるにつれて集中力がないのではなく次へのチャレンジ精神が非常に強いという事がわかりました。どんどん次にチャレンジしたい気持ち。継続する事の出来る日本人とチャレンジ精神が強いオーストラリア人の個性を持つ選手を育てていきたいです。

まだまだどんどん多くの事にチャレンジしていきたいと思います。世の中には多くのチャレンジャーがいて、またチャレンジしたくてもできない選手も沢山います。今僕がサッカーのコーチをできる事を決して当たり前と思わずこれからも情熱を持って子供達と共に成長していきたいと思います。

志高く

感謝=忘れない

(撮影:斉藤麻衣子)

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